【基本のき】ノーコード開発は「野良アプリ」の温床になる?

株式会社ジャスミンソフト

更新日: 2022年3月7日

野良アプリとは?

作った人がいなくなって保守できない状態にもかかわらず、使い続けられるようなアプリケーションのことです。
何かあっても誰も責任がとれないわけです。

問題は「誰も保守できない状態」だけにとどまりません。異なる部門でそれぞれ独自のアプリケーションをつくったところ、似たようなデータを管理していたということもあります。つまり「似て非なるデータが組織に散在した状態」になってしまうと、アプリケーション間でデータをコピペしはじめるという、面倒な作業が増えてしまうのです。

よく知られているのは「VBAやマクロが盛り込まれた謎のExcelファイル」「作った人が退職して、どうしようもなくなったAccessファイル」です。
これに懲りた人ほど、ノーコード開発に不信感をもっているようです。

ノーコード開発で同じ失敗をしないために

もちろん、ノーコード開発の普及が同じような問題を引き起こすのは、誰も望んでいません。

ということは「簡単に開発できる」ことだけではなく「何をつくっているのかを見える化する」両方の視点が大切ということです。

では具体的に、何をどう「見える化」すればよいのでしょうか?私たちは二つの切り口で考えています。

1.アプリの見える化

一つ目は「アプリの見える化」です。
誰が(またはどの部署が)どういうアプリをつくっているかが、全社横断的に「見える」とよいでしょう。

ではどういう手段で見える化するのがよいのでしょうか?
「つくったアプリを説明する一覧表」をExcelで作成して全社員にメールで通知する?
そんな発想では、解決できそうにありません……。

一覧表をExcelではなく、これもまたアプリにして(作ったアプリを管理するアプリ)開発者に記入してもらう?
これも、開発者が書き忘れたら破綻しそうです。また、必ず書くようにと強制すると、やはり、やる気が削がれます。

まずノーコード開発は単体のツールではなくクラウドのプラットフォームで動作することがよいでしょう。
どこからでもアクセスできるプラットフォームが不可欠です。
これによって1つの部署に留まらず、全体で共有できるようにします。

その上で、どういうアプリなのかという「設計情報」が、しかるべき権限をもった人が自由に閲覧できるようになるとよいでしょう。
設計情報にはアプリの構造、データの種別、業務ルールがプログラムよりも平易な表現で書かれている、とします。
(プログラムだと専門家しか読めません。設計情報は、プログラマでなくても読めるようになっていることが求められます。)

台帳管理との違いは、見える化のための面倒な作業を不要とすること、です。
開発と見える化が表裏一体となり自動で行われることが成功の秘訣です。

2.データの見える化

二つ目は「データの見える化」です。
このアプリはどういうデータを扱っているのか、これも上で説明した「設計情報」に含まれています。

私たちはこれがとても重要と考えています。
扱うデータについての「知識」を開発者同士で共有することで、アプリごとに似たようなデータをばらばらに持たせるのではなく、あるアプリで入力されたデータを別のアプリで再利用するのが当たり前という文化にしましょう。

これは、組織全体の無駄なコピペ作業を減らすことにつながります。

この実現のためにもう一つ提案があります。
ノーコードでアプリを開発する人たちの中から、「データに対して責任をもつ人(または少人数のチーム)」を用意することです。

ここでは仮に「データ・モデラー」と呼びます。(モデラーとはモデルを設計する = モデリング、という意味があります。)

アプリ開発者の関心ごとは3つあります。
「アプリの機能(業務ルール)」「ユーザインタフェース(操作画面)」そして「管理するデータ」です。そのうち最後のデータについては、常に「データ・モデラーに相談する」ことを義務付けます。この必要性が理解できれば、やる気を削ぐことにはつながらないでしょう。

むしろ自分達の開発が常に部分最適ではなく、組織全体に貢献できることを実感できることになれば、やる気がアップするはずです。

つまりノーコード開発を推進しようとする組織の中に「データ・モデラー」を必ず用意すること。これがノーコード開発ブームを過去の失敗にしない工夫です。

まとめ

むかしむかし、エンドユーザコンピューティング (EUC) というキーワードが注目されたことがありました。
ちょうど今のノーコード開発ブームに似ており、現場主導でアプリをつくろうという運動でした。
しかし、適切な統制方法が定まらなかったため、野良アプリという失敗を経験したことも事実です。

その経験を通じて、私たちはアプリとデータの見える化が大切ということを学びました。
見える化によって、アプリ同士でデータはできるだけ再利用するという「文化」を育むことが成功につながると考えています。

ここで重要な役割をもつ「データ・モデラー」ですが、難しい技術知識を学ぶわけではありません。
組織の中を流れる「データ」はどういうもので、誰がつくって、誰が利用しているのかをすべて把握する人(チーム)をちゃんと持ちましょうということです。

私たちはここが DX と呼ばれる活動の中心になる、とさえ考えているのです。

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